第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、雇用機会が不足している地域内に居住する労働者に関し、当該地域の関係者の自主性及び自立性を尊重しつつ、就職の促進その他の地域雇用開発のための措置を講じ、もつて当該労働者の職業の安定に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において地域雇用開発とは、求職者の総数に比し雇用機会が不足している地域について第三章及び第四章に定める措置を講ずることにより、地域的な雇用構造の改善を図ることをいう。
2 この法律において「雇用開発促進地域」とは、次に掲げる要件に該当する地域をいう。
一 自然的経済的社会的条件からみて一体である地域であること。
二 その地域内に居住する労働者(十五歳以上の者に限る。)その他の就業の意思及び能力を有する者として厚生労働省令で定める者の総数に対する当該地域内に居住する求職者の数の割合が相当程度に高く、かつ、当該求職者の総数に比し著しく雇用機会が不足しているため、当該求職者がその地域内において就職することが著しく困難な状況にあること。
三 前号に該当する状態が相当期間にわたり継続することが見込まれるものとして厚生労働省令で定める状態にあること。
四 その地域内に居住する求職者に関し第三章に定める地域雇用開発のための措置を講ずる必要があると認められること。
3 この法律において自発雇用創造地域とは、次に掲げる要件に該当する地域をいう。
一 一又は二以上の市町村(特別区を含む。以下同じ。)の区域であること。
二 その地域内に居住する求職者の総数に比し相当程度に雇用機会が不足しているため、当該求職者がその地域内において就職することが困難な状況にあること。
三 前号に該当する状態が相当期間にわたり継続することが見込まれるものとして厚生労働省令で定める状態にあること。
四 その地域内の市町村、当該地域をその区域に含む都道府県、当該地域の事業主団体その他の地域の関係者が、その地域の特性を生かして重点的に雇用機会の創出を図る事業の分野及び当該分野における創意工夫を生かした雇用機会の創出(以下雇用の創造という。)の方策について検討するための協議会を設置しており、かつ、当該市町村が雇用の創造に資する措置を自ら講じ、又は講ずることとしていること。
五 その地域内に居住する求職者に関し第四章に定める地域雇用開発のための措置を講ずる必要があると認められること。
(責務)
第三条 国は、雇用開発促進地域及び自発雇用創造地域における求職者の発生の状況その他これらの地域における雇用の動向に的確に対処するため、これらの地域内に居住する求職者、これらの地域内に所在する事業所に雇用されている労働者等について、地域雇用開発の促進に必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めなければならない。
第二章 地域雇用開発指針及び地域雇用開発計画等
(地域雇用開発指針)
第四条 厚生労働大臣は、雇用開発促進地域及び自発雇用創造地域における地域雇用開発の促進に関する指針(以下地域雇用開発指針という。)を策定するものとする。
2 地域雇用開発指針においては、国の雇用開発促進地域及び自発雇用創造地域における地域雇用開発の促進に関する基本方針その他次条第一項の地域雇用開発計画及び第六条第一項の地域雇用創造計画の指針となるべき事項について定めるものとする。
3 厚生労働大臣は、地域雇用開発指針を策定しようとするときは、関係行政機関の長と協議するものとする。
4 厚生労働大臣は、地域雇用開発指針を策定したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
5 前二項の規定は、地域雇用開発指針の変更について準用する。
(地域雇用開発計画)
第五条 都道府県は、地域雇用開発指針に基づき、当該都道府県内の地域であつて雇用開発促進地域に該当すると認められるものについて、当該地域に係る地域雇用開発の促進に関する計画(以下地域雇用開発計画という。)を策定し、厚生労働大臣に協議し、その同意を求めることができる。
2 地域雇用開発計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 雇用開発促進地域の区域
二 雇用開発促進地域の地域雇用開発を促進するための方策に関する事項(当該雇用開発促進地域内において行うべき第七条の規定に基づく助成及び援助に関する事項を含む。)
三 計画期間
3 地域雇用開発計画においては、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を定めるよう努めるものとする。
一 雇用開発促進地域における労働力の需給状況その他雇用の動向に関する事項
二 雇用開発促進地域の地域雇用開発の目標に関する事項
4 都道府県知事は、地域雇用開発計画の案を作成するに当たつては、あらかじめ、関係市町村長の意見を聴くものとする。
5 厚生労働大臣は、地域雇用開発計画が次の各号のいずれにも該当するものであると認めるときは、その同意をするものとする。
一 その地域雇用開発計画に係る地域が雇用開発促進地域に該当し、かつ、地域雇用開発指針に適合するものであること。
二 第二項第二号及び第三号に掲げる事項が地域雇用開発指針に適合するものであること。
三 その他地域雇用開発指針に照らして適切なものであること。
6 厚生労働大臣は、前項の規定による同意をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、第二項第一号に掲げる区域を管轄する都道府県労働局に置かれる政令で定める審議会の意見を聴かなければならない。
7 都道府県は、地域雇用開発計画が第五項の規定による同意を得たときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
8 都道府県は、第五項の規定による同意を得た地域雇用開発計画を変更しようとするときは、厚生労働大臣に協議し、その同意を得なければならない。
9 第四項から第七項までの規定は、前項の場合について準用する。
(地域雇用創造計画)
第六条 市町村は単独で又は共同して、都道府県は当該都道府県の区域内の市町村と共同して、地域雇用開発指針に基づき、当該市町村の区域又は当該都道府県の区域内の市町村の区域であつて、自発雇用創造地域に該当すると認められるものについて、当該区域に係る地域雇用開発の促進に関する計画(以下地域雇用創造計画という。)を策定し、厚生労働大臣に協議し、その同意を求めることができる。
2 地域雇用創造計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 自発雇用創造地域の区域
二 自発雇用創造地域の特性を生かして重点的に雇用機会の創出を図る事業の分野(第十二条第一項において「地域重点分野」という。)に関する事項
三 自発雇用創造地域における雇用の創造に資する方策その他当該自発雇用創造地域の地域雇用開発を促進するための方策に関する事項
四 計画期間
五 第二条第三項第四号に規定する協議会(以下地域雇用創造協議会という。)を構成する事業協同組合、協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合若しくはその連合会であつて厚生労働省令で定めるもの又は一般社団法人で第十二条第二項第一号に規定する中小企業者を直接若しくは間接の構成員とするもの(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)(以下この号及び同項第二号において事業協同組合等という。)が同条第三項の規定により労働者の募集に従事しようとする場合にあつては、当該事業協同組合等に関する事項
3 地域雇用創造計画においては、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を定めるよう努めるものとする。
一 自発雇用創造地域における労働力の需給状況その他雇用の動向に関する事項
二 自発雇用創造地域の地域雇用開発の目標に関する事項
4 市町村長(特別区の区長を含む。)又は都道府県知事は、地域雇用創造計画の案を作成するに当たつては、あらかじめ、地域雇用創造協議会の意見を聴くように努めるものとする。
5 厚生労働大臣は、地域雇用創造計画が次の各号のいずれにも該当するものであると認めるときは、その同意をするものとする。
一 その地域雇用創造計画に係る地域が自発雇用創造地域に該当し、かつ、地域雇用開発指針に適合するものであること。
二 第二項第二号から第五号までに掲げる事項が地域雇用開発指針に適合するものであること。
三 その他地域雇用開発指針に照らして適切なものであること。
6 厚生労働大臣は、前項の規定による同意をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、第二項第一号に掲げる区域を管轄する都道府県労働局に置かれる政令で定める審議会の意見を聴かなければならない。
7 市町村又は都道府県は、地域雇用創造計画が第五項の規定による同意を得たときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
8 市町村又は都道府県は、第五項の規定による同意を得た地域雇用創造計画を変更しようとするときは、厚生労働大臣に協議し、その同意を得なければならない。
9 第四項から第七項までの規定は、前項の場合について準用する。
第三章 雇用開発促進地域に係る地域雇用開発のための措置
(地域雇用開発のための助成及び援助)
第七条 政府は、第五条第五項の規定による同意を得た地域雇用開発計画(同条第八項の規定による変更の同意があつたときは、その変更後のもの。以下この条において同じ。)に係る雇用開発促進地域(以下同意雇用開発促進地域という。)における地域雇用開発を促進するため、当該地域雇用開発計画で定められた同意雇用開発促進地域内において行うべき助成及び援助に関する事項の内容に応じ、当該同意雇用開発促進地域内において事業所を設置し、又は整備して当該同意雇用開発促進地域内に居住する求職者を雇い入れる事業主、当該雇い入れた者について職業に必要な技能及びこれに関する知識を習得させるための教育訓練を実施する事業主その他の厚生労働省令で定める事業主に対して、雇用保険法第六十二条の雇用安定事業又は同法第六十三条の能力開発事業として、必要な助成及び援助を行うものとする。
(職業訓練の実施)
第八条 国及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、同意雇用開発促進地域内に居住する求職者に対して迅速かつ効果的な職業訓練を実施するため、訓練時期、訓練期間、職業訓練に係る職種、委託訓練等について特別の措置を講ずるものとする。
2 国は、都道府県が前項の措置に相当する措置を講ずることを奨励するため、当該措置を講ずる都道府県に対して、必要な助成及び援助を行うように努めるものとする。
(職業紹介等の実施)
第九条 公共職業安定所は、同意雇用開発促進地域内に居住する求職者の速やかな就職を容易にするため、雇用情報の提供、求人の開拓、職業指導及び就職のあつせんを行う等必要な措置を講ずるものとする。
第四章 自発雇用創造地域に係る地域雇用開発のための措置
(地域雇用開発のための事業)
第十条 政府は、第六条第五項の規定による同意を得た地域雇用創造計画(同条第八項の規定による変更の同意があつたときは、その変更後のもの。以下「同意地域雇用創造計画」という。)に係る自発雇用創造地域(以下同意自発雇用創造地域という。)における地域雇用開発を促進するため、当該同意地域雇用創造計画に係る地域雇用創造協議会からの提案に係る事業が当該同意自発雇用創造地域内に居住する求職者に対する当該同意自発雇用創造地域内に所在する事業所に係る求人に関する情報の提供又は就職に必要な知識及び技能を習得させるための講習の実施その他の厚生労働省令で定める事業に該当する場合であつて、厚生労働大臣が当該同意自発雇用創造地域における雇用の創造に資するために適当であると認めるものであるときは、当該事業を雇用保険法第六十二条の雇用安定事業又は同法第六十三条の能力開発事業として行うものとする。
2 政府は、厚生労働省令で定めるところにより、前項に規定する事業の全部又は一部を当該地域雇用創造協議会又は当該同意自発雇用創造地域において雇用の創造に資する事業を行う団体(当該地域雇用創造協議会の提案に係る団体であつて、厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)に委託することができる。
(準用)
第十一条 第八条及び第九条の規定は、同意自発雇用創造地域内に居住する求職者について準用する。
(委託募集の特例)
第十二条 地域中小企業団体の構成員である中小企業者が、当該地域中小企業団体をして当該同意自発雇用創造地域における地域重点分野に属する事業に係る職業に必要な高度の技能及びこれに関する知識を有する労働者の募集を行わせようとする場合において、当該地域中小企業団体が同意地域雇用創造計画に従つて当該募集に従事しようとするときは、職業安定法第三十六条第一項及び第三項の規定は、当該構成員である中小企業者については、適用しない。
2 この条及び次条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 中小企業者 中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律第二条第一項に規定する中小企業者をいう。
二 地域中小企業団体 地域雇用創造協議会を構成する事業協同組合等であつて、第六条第二項第五号の規定により同意地域雇用創造計画で定められたものをいう。
3 第一項の地域中小企業団体は、当該募集に従事しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、募集時期、募集人員、募集地域その他の労働者の募集に関する事項で厚生労働省令で定めるものを厚生労働大臣に届け出なければならない。
4 職業安定法第三十七条第二項の規定は前項の規定による届出があつた場合について、同法第五条の三第一項及び第四項、第五条の四、第三十九条、第四十一条第二項、第四十二条第一項、第四十二条の二、第四十八条の三第一項、第四十八条の四、第五十条第一項及び第二項並びに第五十一条の規定は前項の規定による届出をして労働者の募集に従事する者について、同法第四十条の規定は同項の規定による届出をして労働者の募集に従事する者に対する報酬の供与について、同法第五十条第三項及び第四項の規定はこの項において準用する同条第二項に規定する職権を行う場合について準用する。この場合において、同法第三十七条第二項中労働者の募集を行おうとする者とあるのは地域雇用開発促進法第十二条第三項の規定による届出をして労働者の募集に従事しようとする者」と、同法第四十一条第二項中当該労働者の募集の業務の廃止を命じ、又は期間とあるのは期間と読み替えるものとする。
5 職業安定法第三十六条第二項及び第四十二条の三の規定の適用については、同項中前項のとあるのは被用者以外の者をして労働者の募集に従事させようとする者がその被用者以外の者に与えようとすると、同条中第三十九条に規定する募集受託者とあるのは地域雇用開発促進法第十二条第三項の規定による届出をして労働者の募集に従事する者と、同項にとあるのは次項にとする。
第十三条 公共職業安定所は、前条第三項の規定により労働者の募集に従事する地域中小企業団体に対して、雇用情報、職業に関する調査研究の成果等を提供し、かつ、これに基づき当該募集の内容又は方法について指導することにより、当該募集の効果的かつ適切な実施の促進に努めなければならない。
(地域再生に係る措置との総合的な実施)
第十四条 国は、この章に定める措置と別に講ぜられる地域の活力の再生を推進するための措置とを総合的かつ効果的に講ずるよう努めるものとする。
第五章 雑則
(産業集積の形成及び活性化に係る措置等との総合的な実施)
第十五条 国は、この法律に定める措置と別に講ぜられる地域における産業集積の形成及び活性化を促進するための措置その他の地域の活性化に資する措置とを総合的かつ効果的に講ずるよう努めるものとする。
(協力)
第十六条 公共職業安定所、都道府県、市町村及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、同意雇用開発促進地域及び同意自発雇用創造地域における地域雇用開発の促進に必要な施策が円滑かつ効果的に実施されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
(地方公共団体への援助)
第十七条 国は、地域雇用開発計画又は地域雇用創造計画を策定しようとし、又は策定した都道府県又は市町村に対し、雇用開発促進地域又は自発雇用創造地域における地域雇用開発を促進するための措置に関し必要な情報提供、助言その他の援助を行うように努めなければならない。
2 都道府県は、地域雇用創造計画を策定しようとし、又は策定した市町村に対し、自発雇用創造地域における地域雇用開発を促進するための措置に関し必要な情報提供、助言その他の援助を行うことができる。
(船員となろうとする者に関する特例)
第十八条 船員職業安定法第六条第一項に規定する船員(以下船員という。)となろうとする者に関しては、第四条第一項並びに同条第三項及び第四項(これらの規定を同条第五項において準用する場合を含む。)中厚生労働大臣とあるのは国土交通大臣と、第九条(第十一条において準用する場合を含む。)中公共職業安定所とあるのは地方運輸局(運輸監理部を含む。)と、第十六条中「公共職業安定所、都道府県、市町村及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構とあるのは地方運輸局(運輸監理部を含む。)都道府県及び市町村とする。
2 その地域内に居住する求職者のうち、船員となろうとする者の占める割合が相当程度のものである地域に係る地域雇用開発計画及び地域雇用創造計画については、第五条第一項並びに同条第五項及び第六項(これらの規定を同条第九項において準用する場合を含む。)並びに第八項並びに第六条第一項並びに同条第五項及び第六項(これらの規定を同条第九項において準用する場合を含む。)並びに第八項中厚生労働大臣とあるのは、厚生労働大臣及び国土交通大臣とする。
(権限の委任)
第十九条 この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
2 前項の規定により都道府県労働局長に委任された権限は、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所長に委任することができる。
3 この法律に定める国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)に委任することができる。
第六章 罰則
第二十条 第十二条第四項において準用する職業安定法第四十一条第二項の規定による業務の停止の命令に違反して、労働者の募集に従事した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第二十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第十二条第三項の規定による届出をしないで、労働者の募集に従事した者
二 第十二条第四項において準用する職業安定法第三十七条第二項の規定による指示に従わなかつた者
三 第十二条第四項において準用する職業安定法第三十九条又は第四十条の規定に違反した者
第二十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十二条第四項において準用する職業安定法第五十条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
二 第十二条第四項において準用する職業安定法第五十条第二項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
三 第十二条第四項において準用する職業安定法第五十一条第一項の規定に違反して秘密を漏らした者
第二十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
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